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寺院葬とは何のこと?寺院葬のマナーと注意点、メリット・デメリット

「葬儀は専門家に」という考え方が根付き始め、「葬儀=葬儀会社(やそれに類するもの)に頼むもの」という価値観を持つ人が多くなってきた現在においては、葬儀を行う場所としてよく葬儀ホールが選ばれるようになりました。
かつては家や寺院で行うものであった葬儀が、様変わりしていっているのです。

しかしそれでも、寺院で葬儀を行うご家庭もあります。
今回は寺院で行う葬儀を取り上げ、その特徴とメリット・デメリット、そしてマナーについて解説していきます。

<寺院葬とは、寺院で行う葬儀のことを指す>

すでに述べた通り、現在は葬儀ホールで葬儀を行うご家庭が多くなっています。しかし葬儀の場所の候補としては、ほかにも「寺院」「家」などが挙げられます。そのなかで、寺院で行う葬儀を特に「寺院葬」と呼びます。

寺院葬は寺院を会場として行う葬儀ですが、ここに神道と仏教の違いをみてとることができます。

かつては、神道と仏教はほぼ一体のものとして扱われていました。これを「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」と呼びます。しかし明治時代に入り、神道と仏教が明確に分けられるようになりました。なお明治維新のときには、神仏の分離が明確に法律によって決められていました。
神仏分離(しんぶつぶんり)あるいは神仏判然(しんぶつはんぜん)と呼ばれるこの政策により、神道と仏教は明確に分けられます。現在でも神仏習合時代の流れを受け継ぐようなかたちで似た部分も残していますが、はっきりとした「違い」をみてとることもできます。
そのような「違い」のなかでも代表的なもののうちのひとつとして、「宗教施設をどうとらえるか」があります。

神道においては、死は穢れ(けがれ)として受け止められます。そのため、人が亡くなったときに神社で葬儀を行うということはありません。それどころか、喪に服している期間は神社にお参りに行くべきではないと判断されます。
しかし仏教においては、このような考え方はとりません。仏教の場合は、宗教施設である寺院での葬儀が認められていますし、実際昔はこのような寺院葬が当たり前に行われていました。

なお寺院葬には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つは、「寺院を会場とするが、その執行は葬儀会社が中心として行うもの」です。
そしてもう1つは、「寺院を会場とし、執行も寺院が中心として行うもの」です。

どちらも寺院を会場とする点は同じですが、少し性質が異なります。
前者の場合は、そのお寺に併設された葬儀式場を使うことはできても、本堂で寺院葬を行うことはできない……とされる場合もあります。
対して後者の場合は、もともとその寺院の檀家であったご家族が選ぶ形式であることも多いため、本堂での寺院葬が可能となります。
もっともこのような区別は、それほど厳密なものではありません。葬儀会社を経由して寺院葬を行う場合でも本堂を使えることもありますし、そもそも葬儀式場を併設していない寺院で寺院葬が行われる場合もあります。そのため、四角四面に考える必要はあまりないでしょう。
「どうしても本堂で寺院葬をやりたい」「寺院葬を希望しているが、形態にこだわりがある」という場合は、その部分も含めて、問い合わせをすることをおすすめします。

ちなみに、寺院葬でかかる金額は、一般的な葬儀ホールを使ったときとそれほど大きくは変わりません。また、「普段支えてくれる檀家に対して場所を提供する」という価値観を持っている寺院の場合は、むしろ使用料金が安くなる(あるいは無料になる)可能性もあります。寺院葬=高い、と考えるのは間違いです。

葬儀につきものの「祭壇」に関しては、葬儀会社が持ち込むこともあります。ただし、「寺院での葬儀である」ということで、本堂のところにそのまま棺を置き、簡素にまとめるやり方がとられることもあります。後者のやり方の場合、お花や供物を飾って終わり……となるため、費用もあまりかかりません。

<寺院葬のメリットについて>

寺院葬には、葬儀ホールでの葬儀とはまた異なるメリットがあります。それを3つの観点から説明します。

  1. 仏教への帰属意識が高い人の場合は、心情面で満たされた葬儀となる
  2. ケースバイケースではあるが、安く済ませられることもある
  3. ご近所の人が参加しやすい

それぞれ解説していきます。

1.仏教への帰属意識が高い人の場合は、心情面で満たされた葬儀となる
寺院葬を行うもっとも大きなメリットは、やはり「心情面で満たされること」にあるといえるでしょう。
寺院葬の場合、慣れ親しんだ菩提寺が会場として選ばれることが多いといえます。普段から信仰の対象となっている仏様やご僧侶様のもとで最後の時を過ごせるということで、仏教への帰属意識の高い人にとっては非常に安心感があります。
「仏様のところへ旅立つ」「極楽浄土への旅路」を強く意識させるものであり、心が満たされることでしょう。

現在は多様化していってはいるものの、葬儀ホールでの葬儀はやはり画一的なものとなりやすいという欠点もあります。
しかし、寺院葬が激減した現在において寺院葬を選べば、それだけで個性的な葬儀になりえます。また葬儀ホールでは決して出すことのできない荘厳な雰囲気のなかで故人を見送ることができるというメリットもあります。

親族の理解も非常に得られやすく、反対されることはほぼないでしょう。

2.ケースバイケースではあるが、安く済ませられることもある
上記でも述べたように、寺院は「檀家に対する気持ち」として会場を無料で貸し出すこともあります。

また、かなり大きい要素として、「ご僧侶様へのお車代が浮かせられる」という点が挙げられます。
「お車代」とは、葬儀を行う会場にご足労いただくときにお渡しするお金です。「交通費」と言い換えることができるものではありますが、「交通費の実費」で求められることはほぼなく、5000円~10000円を包むのが相場です。また、ご僧侶様1人に対して1つの袋で包むものであるため、複数人のご僧侶様を呼ぶ場合は、人数分のお車代が必要となります。
ここにお布施やお膳代(精進落としにご僧侶様が参加されない場合)も加わるため、ご僧侶様にお渡しする金額はかなり大きくなります。

しかし寺院葬の場合は、ご僧侶様の寺院で行うわけですから、このお車代が発生しません。また、送り迎えも不要です。

3.ご近所の人が参加しやすい
「非常に遠方に菩提寺がある」というケースもないわけではありませんが、基本的には菩提寺は自分たちの住まいに近いところにあることが多いといえます。つまり、自分の英の周りに住むご近所さんから見ても、「近い会場で行われる葬儀」になるということです。
そのため、ご近所の人も参加しやすい可能性が高いといえるでしょう。また、ご近所さん自体も、寺院葬を上げる寺院の檀家である……というケースもあり得ます。

<寺院葬のデメリットについて>

寺院葬が廃れた原因のひとつは「宗教への帰属意識が薄まったこと」にあると思われますが、それ以外の原因もあります。そしてこれは、「寺院葬を行うデメリット」と重なる部分が多いといえます。

  1. 葬儀に最適化しているかたちとは言い難い寺院も多い
  2. スケジュールの都合がつけにくいシーズンもある
  3. 慣れない葬儀形態であるため、参列者が迷うこともある

1.葬儀に最適化しているかたちとは言い難い寺院も多い
葬儀ホールでの葬儀が一般化した理由のひとつとして、「葬儀ホールは葬儀に最適化されている」という点が挙げられるでしょう。
空調設備がしっかりしていて、イス席で、バリアフリーに対応していて……と、「訪れる人やご遺族が、不便のないかたち」に整えられているのです。

しかし寺院葬の場合、夏場でもエアコンのついていない本堂での葬儀となることもよくあります。また基本的には畳に正座のスタイルで行われるため、足腰が弱い人には難易度が高いこともあります。バリアフリー未対応で車椅子の場合は対応ができないケースもあり、「参列しにくい状況」になっていることもよくあります。

加えて、「そもそも小さな寺院なので、駐車スペースが十分ではない」という場合もあります。このようなケースでは公共交通機関を使っての来訪が求められますが、不便なところにある寺院の場合は、送迎もしくはタクシーでの移動が必要となります。

2.スケジュールの都合がつけにくいシーズンもある
お盆やお彼岸のシーズンは、寺院にとって繁忙期です。そのため、葬儀ホールで葬儀を行う場合であっても、この期間中のスケジュール調整が難しい場合もあります。
寺院葬の場合は、「寺院そのもの」を会場とするので、この傾向が特に顕著です。
亡くなった時期によっては、スケジュールの都合がつかず、断られてしまうこともあります。

3.慣れない葬儀形態であるため、参列者が迷うこともある
現在は葬儀ホールでの葬儀が一般化しているため、寺院葬は初めてである……という人も多くいます。
このような人にとっては、寺院葬は大きな戸惑いを感じさせるものでしょう。
葬儀会社経由で依頼すればトラブルが起きる確率は低くなりますが、「葬儀会社自体も寺院葬に慣れていない」というケースもあり得ます。
実際、そこそこ大きな葬儀会社に勤めていた人であっても、「寺院葬は1年に3回あるかどうかだった」語ることもあります。

<寺院葬を行う場合のマナーについて>

上記で述べた「3.慣れない葬儀形態であるため、参列者が迷うこともある」という点をクリアするための配慮が、遺族側に求められます。これは寺院葬を行うときのマナーともいうべきものです。

寺院葬の場合、駐車場が問題になるケースが非常に多いといえます。そのため事前に駐車場の有無と、駐車可能台数をよく確かめておくとよいでしょう。「駐車場がない(あるいは、あるけれども非常に遠い)」「十分な数の駐車場がない」ということであれば、そのことを伝え、公共交通機関での来訪をお願いする必要が出てくることもあるでしょう。また、親族に対しては、「駐車場が少ないから、乗り合わせて来てくれ」とお願いするのも良いでしょう。

参列する親族のなかに足腰が弱い人がいた場合は、菩提寺と連絡を取り合い、イスを使えるかどうかを確認することを推奨します。上でも述べたように寺院葬の場合は「畳に座布団が敷いてあって、そこに正座する」というやり方が一般的です。
しかし事前に、「足が悪くて、正座ができない親族がいること」を伝えておけば、イスを用意してくれたり、イスを持ち込むことを許可されたりする可能性が高いといえます。
なお、「そもそも本堂でも日常的にイスを使っている」というケースもないわけではありませんから、この点も合わせて確認しておくとよいでしょう。

寺院葬を行う場合は、一般的な葬儀ホールで葬儀を行うときよりも菩提寺との連絡を密にとることになります。また現在では珍しいかたちになってしまったものでもあるため、「お花を飾る際にはどこにお願いしたらよいか」「スケジュール調整はどのように行うか」「どこまでを葬儀会社に頼み、どこからを寺院に頼み、どこまでを自分たちでやるか」をはっきりさせておいた方が良いでしょう。
また寺院葬を行う場合は、今後も菩提寺との関係が密に続いていくことになります。そのため、ご僧侶様に対しては特に丁寧にふるまい、敬意を持って接する姿勢が求められます。

<寺院葬の特徴とマナーをふまえて葬儀を行う>

寺院葬は、一般的な葬儀ホールで葬儀を行うときとはまた異なるデメリットがあります。
また、

  1. 仏教への帰属意識が高い人の場合は、心情面で満たされた葬儀となる
  2. ケースバイケースではあるが、安く済ませられることもある
  3. ご近所の人が参加しやすい
  • 事前に確認するべきことが多い
  • 足が悪い人がいる場合は事前にそれを共有し、対策を模索する
  • それぞれの仕事範囲を明確にする
というマナーもあります。

ただこのような面倒さはあるものの、寺院葬には寺院葬だけのメリットがあるのもたしかです。荘厳な雰囲気のなかで丁寧に故人を見送ることのできる寺院葬は、宗教への帰属意識が高い人にとっては特別なものとなるでしょう。特に故人が寺院葬を希望している場合は、マナーを守る面倒さやイレギュラーなことに対応するわずらわしさを考慮してでも、寺院葬を行いたいものです。

寺院葬の特徴やメリット・デメリット、そして寺院葬での守るべきマナーを把握したうえで、寺院葬に臨みましょう。

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