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死亡者の高額療養費請求について知っておきたい制度の概要

 

 

 

医療費が高額になった場合に家計への負担を軽減してくれる制度が「高額療養費制度」です。しかし、患者本人が治療中や入院中に亡くなった場合、残された家族が「高額療養費を請求できるのか」「どのように手続きすればよいのか」を知らないケースは少なくありません。本記事では請求方法や手続きについて、分かりやすく解説します。

1.高額療養費制度とは

制度の基本概要

高額療養費制度とは、1か月(暦月)に支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。これは、健康保険証を使って受診した医療費(保険診療)が対象となり、公的医療保険に加入していれば誰でも利用できる仕組みです。

自己負担限度額の目安

限度額は所得区分によって異なりますが、たとえば70歳未満の一般的な所得の方であれば、「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」が上限となります。つまり、100万円の医療費を支払った場合、自己負担額は約87,000円程度で済む計算です。

申請方法の基本

通常は「療養を受けた本人」が、加入している健康保険組合や市区町村国保の窓口に申請を行います。しかし、本人が亡くなった場合は、この「本人による請求」ができません。ここからは、死亡者のケースに焦点を当てて解説します。

2.死亡者でも高額療養費は請求できるのか

結論から言うと、被保険者(または被扶養者)が亡くなった場合でも、高額療養費の支給を受けられる可能性があります。ただし、その請求は「相続人(または遺族)」が行う必要があります。

申請できる人

原則として、死亡した方の法定相続人が申請人となります。たとえば、

  • 配偶者
  • 子ども
  • 父母
  • 兄弟姉妹

など、民法で定められた相続順位に従って請求権が発生します。

請求の対象となる医療費

亡くなった方が受けていた保険診療の医療費のうち、自己負担限度額を超えた部分が対象です。ただし、亡くなった月の医療費がまとまって確定するまでに時間がかかることもあり、請求までの期間に注意が必要です。

3.死亡者の高額療養費請求の手続きの流れ

請求の手順は、加入していた保険制度によって異なりますが、一般的な流れは次の通りです。

加入していた保険の確認

亡くなった方が加入していたのが「国民健康保険」か「社会保険(健康保険組合など)」のいずれなのかを確認します。加入先ごとに提出先の窓口や書類が異なります。

必要書類の準備

通常は以下の書類を揃えます。

  • 高額療養費支給申請書
  • 医療費の領収書や明細書
  • 被保険者証の写し(または資格喪失証明書)
  • 死亡診断書の写し
  • 戸籍謄本(相続人を確認するため)
  • 相続人の本人確認書類
  • 振込先口座の通帳写し

申請先への提出

勤務先の健康保険組合、市区町村の国保窓口などへ提出します。郵送で受け付けている自治体もあります。

審査・支給決定

内容が確認され支給が認められると、相続人名義の口座に振り込まれます。支給までの目安は、申請からおおよそ1~2か月ほどです。

4.請求できる期限と時効

高額療養費の請求には時効(期限)があり、原則として2年以内に手続きを行わなければなりません。この2年は、「診療を受けた月の翌月の1日」からカウントされます。たとえば、2023年5月に入院して6月に亡くなった場合、「2023年6月1日から2年間(2025年5月末まで)」が請求期限となります。期限を過ぎると原則として支給されません。遺族が忙しく手続きを後回しにしてしまうケースもあるため、葬儀後に落ち着いたら早めに申請を行うことが大切です。

5.高額療養費の支給申請における注意点

(1)医療費の確定を待つ必要がある

入院や治療が複数月にまたがる場合、医療機関での精算が完了しないと申請できません。「支払額が確定してから」でなければ、正確な請求はできない点に注意しましょう。

(2)生前に限度額認定証を利用していた場合

亡くなる前に「限度額適用認定証」を病院に提出していた場合、窓口での支払いはすでに上限額で済んでいる可能性があります。その場合、追加の払い戻しは発生しないケースもあります。

(3)複数の医療機関にかかった場合

同一月に複数の病院や薬局を利用している場合は、それぞれの領収書を合算して申請できます。ただし、同一の保険者にかかった分のみ合算可能です(異なる保険制度間は合算不可)。ただし、70歳未満の方の場合、一つの医療機関(入院・外来・歯科別)での自己負担額が21,000円以上のもののみ合算対象となります。

6.世帯合算制度の活用

同一世帯で複数人が医療を受けた場合、世帯合算として計算できる場合もあります。たとえば、亡くなった方と配偶者が同一世帯で国保に加入していた場合、2人分の自己負担額を合算して限度額を超えれば払い戻しの対象になります。ただし、世帯主が亡くなった場合は「世帯主変更」などの手続きが必要になることがあります。その際、国民健康保険証の再発行も同時に行うとスムーズです。

7.申請先別の窓口一覧

加入保険の種類 申請先 主な問い合わせ窓口
国民健康保険 住所地の市区町村役場 国保窓口 各自治体の国保担当課
協会けんぽ(会社員など) 都道府県支部 全国健康保険協会支部
健康保険組合 勤務先または組合事務所 各健康保険組合窓口
共済組合(公務員) 所属共済組合 共済組合事務局

8.死亡者名義の口座が使えない場合の対処法

高額療養費の振込は、亡くなった本人名義の口座には入金できません。そのため、相続人名義の口座を指定する必要があります。もし相続人が複数いる場合は、代表相続人を1名決めてその人の口座に支給されます。保険者によっては、ほかの相続人全員の同意書や署名・押印が求められる場合もあります。

9.未支給分の年金・保険金との違い

高額療養費の請求と混同しやすいのが、「未支給年金」や「未支給の傷病手当金」などです。これらは支給根拠や請求書類が異なるため、まとめて請求することはできません。それぞれに個別の手続きが必要となるため、死亡後に受け取れる給付金は一覧で確認しておくと安心です。

以下のような制度があります。

  • 未支給年金
  • 未支給の傷病手当金
  • 高額療養費
  • 葬祭費(または埋葬料)

10.まとめ:早めの確認と申請が大切

死亡者の高額療養費は、正しく申請すれば相続人が受け取れる大切な給付制度です。故人が最後まで安心して医療を受けられるように、支えてくれた家族にとっても経済的な負担を少しでも軽くできる仕組みといえるでしょう。ただし、この制度には「申請期限が2年」「相続人による請求」「本人名義の口座は使えない」など、いくつかの注意点があります。特に、亡くなった直後は葬儀や役所の手続き、年金・保険・相続関係の届け出など、やらなければならないことが多く、つい後回しになってしまうことが少なくありません。しかし、高額療養費の請求を忘れてしまうと、せっかく支給されるはずの十数万円が時効で受け取れないというケースも起こり得ます。

そのため、葬儀が落ち着いた段階で、

  • 故人の加入していた健康保険の種類を確認する
  • 医療費の領収書を月ごとに整理する
  • 相続人代表者を決め、書類の準備を始める

といった基本的な準備を早めに進めることが重要です。また、請求に関して不明点がある場合は、遠慮せずに市区町村の国保窓口や健康保険組合の担当部署に相談してみましょう。多くの窓口では、死亡者の請求に関する専用の案内やサポート体制が整っており、書類の書き方や必要書類のチェックも丁寧に教えてもらえます。こうした対応を行うことで、手続きをスムーズに進められるだけでなく、ご家族の精神的な負担も軽減できます。高額療養費は、制度を理解して活用すれば、医療費の支出を大きく抑えることができる非常に有効な仕組みです。今後の安心のためにも、「申請できるものはきちんと請求する」という姿勢を持ち、故人の医療費を正しく整理して、制度を最大限に活かすことが大切です。

 

 

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