はじめに｜なぜ「花」は樹木葬で重要視されるのか？

樹木葬とは、墓石ではなく樹木を墓標とし、自然の中で眠る新しい埋葬スタイルです。形式や宗教にとらわれず、自然回帰の思想を重んじたこの方法において、「花」は単なる装飾を超えた特別な意味を持ちます。

花は見る人の心を和ませ、想いを届けるメッセンジャーであり、また故人の人生や人柄、家族とのつながりを象徴する存在でもあります。樹木葬という自然と融合する埋葬方法では、植えられる花や飾られる花が「その人らしさ」を表す鍵となります。

 

供養と花の歴史｜古くからある「花と祈り」の文化

日本において、花は古来より供養や祈りの場で重要な役割を果たしてきました。仏教では「花供養」と呼ばれる文化があり、お釈迦様の涅槃の際にも沙羅双樹の花が降ったという故事が語られています。

また、仏前に供える花は「無常」を表すとされ、咲いては散るその姿が命のはかなさと輪廻転生を象徴してきました。こうした文化的背景もあり、現代の樹木葬においても「花に想いを込める」ことが、自然な形で受け継がれているのです。

 

選ばれる花の共通点とは？

数ある花の中でも、樹木葬で選ばれる花にはいくつかの共通点があります。

• ・花言葉に深い意味があること
  
• ・控えめで自然と調和する美しさがあること
  
• ・季節感があること（春・秋の花が特に人気）
  
• ・和の景観や静けさに馴染むこと
  
  

見た目が華やかすぎず、故人の内面や静かな時間を思わせるような花が多く選ばれます。以下では、特に人気の5つの花を取り上げ、それぞれの文化的意味や背景を詳しくご紹介します。

 

 桜｜儚さと再生を表す日本の象徴

言わずと知れた日本の国花ともいえる桜は、「命の儚さ」と「新たな始まり」の両面を象徴する花です。花言葉は「精神の美」「優れた美しさ」。短い間に満開となり、潔く散るその姿は、人生の美しさと無常を映し出します。

また、散った後も翌年にはまた新しい花を咲かせる桜の木は、「再生」や「希望」の象徴ともなります。こうした意味合いから、桜の木の下に眠る樹木葬は、見送る人にとっても心の支えとなる存在です。

春になると訪れるたびに満開の桜が迎えてくれるというロマンチックさも、桜が選ばれる理由のひとつです。

 

 バラ｜色に込められた想いと深い愛情

バラというと洋風で派手な印象を持たれるかもしれませんが、実はその奥深い花言葉が供養の場でも選ばれる理由となっています。

• 赤いバラ：愛情・尊敬
  
• 白いバラ：純粋・清らかな祈り
  
• ピンクのバラ：感謝・優しさ
  
  

このように、色によって異なるメッセージを込められるため、故人の性格や家族の想いに合わせて柔軟に選べるのが魅力です。

また、近年ではミニバラやナチュラル系のつるバラなども人気で、自然に調和した形で植栽に取り入れられるようになってきました。

 

ユリ｜永遠の安らぎと清浄の象徴

ユリは古来より葬送の場で用いられてきた代表的な花です。白いユリは「純潔」「威厳」「無垢」といった花言葉を持ち、荘厳さや静けさを伴った雰囲気を醸し出します。

西洋文化では「天国への導き」「魂の昇華」を意味する花としても知られ、日本の仏式・キリスト教式どちらでも使われることが多いです。

樹木葬では、特に白や淡いピンクのユリが好まれます。風にそよぐその姿は、まるで祈りを空へ届けるような清らかさを帯びており、訪れる人の心にも穏やかな余韻を残します。

 

カーネーション｜感謝を込めた「家族の花」

母の日の花として知られるカーネーションは、「家族愛」や「感謝」の象徴として供養の場でも注目されています。

赤いカーネーションは「母の愛」、ピンクは「温かい心」、白は「純粋な愛」など、色により意味が異なり、親や配偶者を偲ぶ際に選ばれることが多いです。

特に「家族葬」や「身内だけで静かに送る樹木葬」などでは、カーネーションをあしらった献花やプレート彫刻がよく使われています。生前にお世話になった人への感謝を、花を通じて静かに伝えることができます。

 

菊｜伝統的で格式ある供養花の新しい使い方

日本の供養において、もっとも古くから使われている花が「菊」です。かつては「仏花」として固定的に使われていましたが、近年ではそのネガティブなイメージを覆すような多彩なデザインや品種が登場しています。

花言葉は「高貴」「真実」「永遠の愛」。本来、非常にポジティブな意味を持つ花です。白い菊だけでなく、ピンクや黄色、ポンポン咲きのかわいらしい品種などもあり、ガーデン型樹木葬では自然に溶け込む彩りとして人気を集めています。

菊の持つ「不老長寿」や「邪気を払う力」といった意味から、守護の象徴としての役割も果たしてくれるのです。

 

個性を活かした花選びのすすめ｜故人らしさを形に

ここまで紹介した花は、どれも人気が高く意味深いものばかりですが、「正解」はありません。最も大切なのは、故人らしさや、家族が大切にしてきた価値観を花で表現することです。

たとえば、ガーデニングが趣味だった方ならその方の庭に咲いていた花を植える。自然散策が好きだった方なら、山野草を選ぶ。こうした選び方は、形式に縛られない樹木葬だからこそできる自由な発想です。

「この花を見ると、あの人を思い出す」そんな花を選ぶことが、何よりの供養になるはずです。

 

Q&A｜樹木葬と花に関するよくある質問

Q1. 樹木葬に使ってはいけない花はありますか？
A1. 特に「使ってはいけない花」と明確に決まっているわけではありませんが、霊園や寺院によっては、外来種や根が強く広がる植物の植栽を制限している場合があります。また、香りが強すぎる花や害虫を引き寄せやすい種類は、他の利用者への配慮から避けることが望ましいとされることも。事前に霊園の規約を確認しましょう。

 

Q2. 故人が特に好きだった花を植えることはできますか？
A2. 多くの樹木葬霊園では、故人の想いを尊重して好きな花を取り入れることが推奨されています。ただし、花の種類や植栽方法には制限があることもあるため、霊園の管理者と相談の上で進めるのが安心です。鉢植えや献花という形で取り入れる方法もあります。

 

Q3. 樹木葬の区画に花を植えるには手続きが必要ですか？
A3. 基本的には霊園のルールに従う必要があり、事前申請や許可が求められるケースがほとんどです。自由に植えられる霊園もありますが、多くの場合、植栽管理の都合上、専門スタッフが対応する形式が取られています。植えたい花がある場合は、あらかじめ相談しましょう。

 

Q4. 花の手入れは家族が行うのですか？
A4. 樹木葬霊園には、手入れを霊園側で行ってくれる「永代管理付き」のプランもあります。その場合、花の植え替えや剪定なども含めて任せることができます。ただし、個人で持ち込んだ鉢植えや献花は、定期的に家族が手入れ・回収する必要がある場合も。契約内容を確認しておきましょう。

 

Q5. 四季折々の花を楽しめるようにするには？
A5. 一年中花を楽しみたい場合は、開花時期の異なる複数の花を組み合わせる植栽プランがおすすめです。たとえば春は桜、初夏は紫陽花、秋はコスモス、冬は椿や南天など。霊園によっては「季節の花コーディネート」を提案してくれるところもあります。

 

花の香りがもたらす癒しと記憶の連鎖

花は視覚的な美しさだけでなく、「香り」も供養の一部になります。たとえばユリやバラの優雅な香りは、ただそこに立つだけで心を落ち着かせてくれる効果があります。

香りは脳の記憶中枢と深く関わっており、「ある香りをかぐと、故人との思い出がふとよみがえる」という体験をされる方も少なくありません。

樹木葬では、こうした香りの花をそっと植えることで、供養の場にもうひとつの“記憶の入り口”をつくることができます。目に見えるものだけでなく、「感じるもの」にも想いを込める、それがより深い供養へとつながります。

 

まとめ｜花は心をつなぐメッセージになる

花は、言葉にできない感情や、目に見えない想いを届けてくれる存在です。樹木葬においては、供養の中心にある樹木とともに、花が「心のよりどころ」となります。

自然とともに眠るという選択をした故人にふさわしい花を選ぶことは、残された家族の心にも優しく寄り添ってくれるはずです。
あなたの想いが、花を通じて美しく形になることを願っています。

葬儀のこと、お墓のこと、終活のことなど何でもお気軽にご相談ください。