樹木葬のお墓参り
樹木葬のお墓参り~どんなことをすればよい? 注意点についても知っておきたい
近年人気を博している埋葬方法に、「樹木葬」があります。
ただ一般的なお墓とは異なるので、樹木葬を選ぶ場合は「お墓参り」も従来のかたちとは異なったものになることは押さえておかなければなりません。
ここでは、樹木葬を選んだ場合のお墓参りの注意点について解説していきます。
※より厳密にみるならば、樹木葬では墓石を持たないので「お墓参りをする」とはいえない、と考えるべきです。ただ代わる言葉を探すことが非常に難しいため、ここではわかりやすい「お墓参り」という表現を使っていきます。
<樹木葬の種類について>
「樹木葬のお墓参り」を考えるうえで必要になってくるのが、「樹木葬の種類の違い」です。樹木葬の種類によって、お墓参りを行うときの手順や注意点も異なってくるので、まずはここをおさえておきましょう。
【里山型樹木葬】
現在のような樹木葬の概念ができたときに、初めて行われた樹木葬はこの里山型であったとされています。
里山型の場合、一般的な「山」にご遺骨を埋葬するかたちをとります。
もちろん最低限の手入れはされていますが、基本的には自然のままの山でゆったりと過ごすことになります。人間の手による整備はあまりされておらず、大自然のなかで眠る形式です。雄大な自然を感じる空間に抱かれることになる形式ですが、お墓参りに行く人には相応の準備が求められる形式でもあります。
なお現在は、このような里山型の樹木葬は比較的少なくなっています。そのため、里山型の樹木葬を希望する場合は、かなり綿密に資料集めをしなければなりません。
【公園型樹木葬】
名前の通り、公園のようなかたちをとっている樹木葬の形式です。埋葬箇所を山型にして芝生を植えるなどの工夫が施されているかたちを指すものであり、公園のようにリラックスして過ごすことができます。シンボルツリーなどを利用して埋葬することができるタイプも多くみられます。
比較的選択肢が広いこと、また里山タイプや庭園タイプほどの個性は持たないものが多いことから、非常に親しみやすく、抵抗感も少ないかたちだといえるでしょう。
特段「公園タイプの樹木葬だ」として打ち出していないところであっても、その風景などから、公園型の樹木葬に分類するのが適当であると考えられる樹木葬墓地も多く存在します。
【庭園型樹木葬】
庭園型樹木葬は、公園型樹木葬と似た性質を持ちます。そのため、時には公園型樹木葬と混同して語られます。庭園型樹木葬も公園型樹木葬も、「人の手によって手入れがされていて、過ごしやすく、景観が保たれやすく、かつ公共交通機関などでアクセスしやすい環境にあることが多い」という共通点を持つからです。
庭園型樹木葬と公園型樹木葬を分けるものとして、「景観の違い」が挙げられます。
どちらも人の手が入っていて景観が保たれているという点では共通していますが、公園型の場合は「公園のように作られている」のに対し、庭園型の場合は「ガーデン風になっている」のが大きな特徴です。
庭園型の場合は明確に「ヨーロッパなどにみられる庭園のかたち」を目指して作られたものなども多く、比較的個性の強い雰囲気に仕上がります。寺院の経営する庭園型樹木葬もあるため、一概に「庭園型樹木葬=西欧風である」とまでは言い切れませんが、豊かなオリジナル色をまとうものが多いのがひとつの特徴で、統一された世界観・景観を持つところが多くみられます。
「庭園」として見たときの完成度が高いものも多く、目を楽しませてくれるスタイルでもあります。
<里山型樹木葬のお墓参りの注意点~「山歩き」であることを意識したい>
上記で紹介した、「それぞれの樹木葬のタイプの違い」をふまえておけば、樹木葬のお墓参りに行くときの準備やマナー、注意点も分かりやすくなります。
ここではまず「里山型樹木葬のお墓参り」に注目し、準備やマナー、注意点について解説していきます。
・服装に気を付けて! 基本的には「山登りができる服装」で行くようにする
里山型樹木葬の場合、上でも述べたように、「大自然の山の中」を歩くことになります。足元は整備されているとは言い難く、山道を自力で登っていくことが前提となります。
そのため、一般的な「お墓参りのやり方」を想定して準備するというよりは、「山登りをするときのやり方」を想定して準備する姿勢が求められます。
たとえば、足元は歩きやすいスニーカーや登山靴とします。ヒールのついた靴などでは上りにくいので、これらは避けましょう。また、服装も、歩きやすく汚れても良いものを選ぶのが基本です。
・水分補給を忘れずに。食べ物に関しては要確認
夏の時期は汗もかきやすいので、水分もしっかり補給するようにしましょう。冬場でも水分補給のための水筒などを持っていくことを強くおすすめします。疲れたらすぐに休むようにして、無理のない運行計画を立てましょう。
食べ物に関しては、持ち込んで構わないのか持ち込んではいけないのか、また売店はあるのかどうかなどを確認しておくとよいでしょう。休憩所の有無も聞いておくと安心です。
・「山登り」なので、天候とスケジュールについても把握しておきたい。事前連絡も必要
また、山の天候は非常に変わりやすいので、出発前に必ず天候を確認するようにしてください。山は暗くなると迷いやすくなりますから、15時までには下山できるようにスケジュール調整を行うようにするのが鉄則です。
里山型樹木葬のお墓参りをする場合は、事前に管理者に対して「×月〇日の▽時からお墓参りをする」という旨を伝え、確認と伝達を行うようにします。管理者側でお墓参りの日程を定めているのであれば、それに従うようにしてください。里山型の樹木葬のお墓参りは、「山登り」とほぼ同じものと考えるべきなので、このような確認・伝達は必須です。
・お供え物に関しても制限が多い、管理者側への問い合わせをしておくと良い
里山型の樹木葬のお墓参りでは、「山に登る、山にお参りをする」という都合上、ほかのお墓参りに比べて制限が多いことにも注意してください。一般的なお墓参りでも「火の始末」に気を付けることが求められますが、里山型の樹木葬のお墓参りでは特にこの傾向が顕著です。なぜなら、一度火をつけてしまうと山火事が起きる危険性も否定できないからです。そのため、「火気厳禁」としている里山型の樹木葬も多くみられます。
また、「お花を持っていって捧げることは許可しているが、花瓶の使用は不可」としているところもあります。
このような縛りもあるため、里山型の樹木葬のお墓参りに際しては、事前に管理者側に「どんなものならばお供えをしてよいか、お供えするときのルールは何か、逆に何をしてはいけないか」を聞いて、確認しておくことが求められます。
<公園型樹木葬及び庭園型樹木葬のお墓参りはそれほど制限は多くない>
ここまで「里山型の樹木葬のお墓参り」について解説していきましたが、公園型樹木葬や庭園型樹木葬の場合はどうなのでしょうか。
それについて解説していきます。
・公園型樹木葬と庭園型樹木葬の間では、「お墓参り」に関しては大きな違いはみられない
上でも述べたように、公園型樹木葬と庭園型樹木葬はしばしば混同して語られます。この2つの違いは「景観の方向性の違い」によるものが大きいためです。「お墓参り」に焦点を当てた場合は、この「景観の方向性の違い」も大きな違いとはなりません。
このような事情があるため、こと「お墓参り」に関しては、専門サイトなどでもこの2つを一緒のものとして話すことが多いといえます。こちらの記事でも、「公園型樹木葬及び庭園型樹木葬のお墓参り」とし、同じ傾向を持つものとして解説していきます。
・アクセスがしやすいところにあることも多い、公共交通機関の利用を
公園型樹木葬及び庭園型樹木葬の場合、アクセスのしやすいところに霊園が設けられていることが多いといえます。公共の交通機関が発達しているところも多く、「利便性の良い路線で最寄り駅まで行けて、そこからバスを使えばほとんど歩かなくてもお墓参りに行ける」としている公園型樹木葬及び庭園型樹木葬も多くみられます。
また、公園型樹木葬及び庭園型樹木葬の場合、霊園で独自にシャトルバスを運行しているところも多いため、最寄り駅からの移動は無料で行える場合もあります。特に比較的大きな公園型樹木葬及び庭園型樹木葬では、このような措置がよくとられていますから、事前に確認をしておくとよいでしょう。
公園型樹木葬及び庭園型樹木葬は、無料の駐車場を持っているところも多くあります。特に、地方の公園型樹木葬及び庭園型樹木葬の場合はこの傾向が顕著です。
「そもそも田舎なので、公園型樹木葬及び庭園型樹木葬への墓参りに限らず、公共交通機関が弱い」という土地柄の場合は、ほぼ確実に駐車場が設けられているため、自家用車があればあまり困ることはないでしょう。
ただ、関東圏の都心部など、もともと土地の値段が高いところの場合は無料の駐車場がないこともあります。このため、自家用車で行きたいと考える場合は、念のため先に確認することをおすすめします。
・服装にも制限は特にない。時間的な制限も緩い
公園型樹木葬及び庭園型樹木葬では、服装の制限も特にありません。常識的な恰好をしていく限りは、咎められることはないでしょう。ヒールの付いた靴などでも歩きやすいように整備されていることが多いので、不便なく行き来できます。お墓参りですが、喪服などを選ぶ必要もなく、普段着でお参りができます。
また現在の公園型樹木葬及び庭園型樹木葬のほとんどがバリアフリー対応のため、足腰が弱い人でも車椅子でお墓参りができるようになっています(一応事前に確認しておくと安心です)。
時間的な制限も比較的緩めにとられています。「営業時間中ならば、連絡不要でいつでもお墓参りができる」としているところが多いため、午前中ならばほぼ確実にお参りができるでしょう。
ただ2021年7月下旬現在は、新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延もあり、開園時間を短縮している公園型樹木葬及び庭園型樹木葬もみられます。特に、感染者が多い地域ではこの傾向が顕著ですから、「午前中ではなくて午後に行きたい」などの場合は、事前に「現在の」開園時間を確認しておくとスムーズです。サイトなどにはまだ営業時間変更の情報を反映していない、というところもあるからです。
・お供えについて~献花台が設けられていることもある。食べ物のお供えは基本的に不可
公園型樹木葬及び庭園型樹木葬で合葬(ほかの人と一緒にご遺骨を埋葬する方法)を選んだ場合、そのシンボルツリーの前に献花台などが設けられていることもあります。また、焼香台が用意されていることもあります。献花台や焼香台がある場合は、そこにお花をお供えしたり、そこで焼香をしたりすることになります。
個別のスペースで眠ることを選んだ場合、「お花は置けるのか」などを事前に確認しておくようにします。
なおこれは公園型樹木葬及び庭園型樹木葬に限ったことではありませんが、お供え物として食べ物を置くことは基本的には認められていません。鳥害や虫害を受けることが非常に多いからです。もしどうしても食べ物をお供えしたい! ということであれば、持っていってシンボルツリーの前に置く→焼香やお祈りを行う→帰るときに、お供えした食べ物を持って帰る、という流れにするとよいでしょう。
<樹木葬は「手を合わせるところがある」という安心感がある>
ここまで、「樹木葬のお墓参りのやり方と注意点」について解説してきましたが、樹木葬の場合は「手を合わせることができる場所がある」という点で、海洋葬や宇宙葬とは異なります。里山型の場合は少し大変ではありますが、お祈りができる場所・お墓参りができる場所があるということが、残されたご家族にとって大きな慰めとなる可能性も高いといえます。愛した人が眠る場所で、愛した人に語り掛けることができるのは、「お墓を持たない」という選択肢をとった人にとっても心の安寧につながるでしょう。
お墓参りは故人のためだけに行うものではありません。故人の心を慰めるために行うものであるのと同時に、残された人が自身の心の安寧を得るために行うものでもあるのです。
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