香典のマナー
香典(不祝儀)のマナーについて
香典(不祝儀)は、通夜や葬儀・告別式のときに持っていくものです。
金銭に関わることであるため、失敗のないようにしたいと考える人も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、
- ・香典(不祝儀)とはそもそもどのような意味があるのか
- ・香典(不祝儀)の金額の相場はいくらくらいなのか
- ・香典(不祝儀)を渡すときのマナー
- ・宗教別、不祝儀袋の表書きの書き方と不祝儀袋の選び方
- ・香典(不祝儀)にまつわるQ&A
<香典(不祝儀)とはそもそもどのような意味があるのか>
葬式のときに当たり前のように出される香典(不祝儀)ですが、このもともとの意味や成り立ちを詳しく知っている人はそれほど多くはないのではないでしょうか。
ここではまず、「香典(不祝儀)とは何か」から解説していきます。
現在のように、「もちがよく、一度火をつけたら長く煙を出し続けるお香」がなかった時代、人々はご遺体を守るためにお香を持ち寄っていました。
このお香は、故人の旅立ちを迎えるためとも、良い香りの煙は故人の食べ物として利用されるとも、ご遺体の腐敗臭を消すために使われたともいわれていますが、昔から葬式の席には欠かすことのできないものとして用いられてきました。
一晩中お香を焚き続ける必要があったため、近所の人やご親族がみんなでお香を喪家に持っていったのです。これが現在の「お香典」の元です。
ただ現在は、上でも述べたように、「長い時間焚き続けることのできるお香」が多数打ち出されています。またお香の値段自体も非常に安くなっており、喪家の負担は軽減されたといえます。このようなことから、現在においては、お香そのものを持ち寄る風習はほとんど廃れたといってもよいでしょう(ただし、現金とともにお供えのようなかたちでお香を持って行ったり、お香付きの弔電を送ったりするという風習はまだ残っています)。
近代の葬儀においては、かつての「お香の持ち寄り文化」に象徴される「相互扶助の精神」だけが残りました。そしてその相互扶助の精神の元、お香本体の代わりに、なんにでも使える「現金」を持ち寄るようになったのです。
ちなみに「香典」という言い方ですが、これは厳密にいえば仏教用語です。そのため、仏教以外ではこの表現は使いません。ただ、広く知れ渡った単語でありわかりやすい言葉でもあるため、専門サイトなどでもしばしば、「キリスト教の香典」などの呼び方を目にすることがあります。
ここでは両方の考えを尊重し、「香典(不祝儀)」という表現を用いて解説していきます。
<香典(不祝儀)の相場はいくらくらいなのか>
香典(不祝儀)について考えるとき、まず真っ先に疑問に思うのは「いくらくらい包んだらよいのか」という点でしょう。
これには明確な正解を求めることはなかなか難しいのですが、
- ・亡くなった人との関係性や縁の深さ
- ・自分自身の年齢
- ・精進落としの席に参加するかどうか
基本的には関係性が薄ければ薄いほど安く、自分自身の年齢が若ければ若いほど安く、精進落としの席に参加しない場合は参加する場合に比べて安くなる、と考えるとよいでしょう。
ここではすべてのパターンを紹介することはしませんが、代表的なものを記しておきます。
父母……20代/30000円~10万円 30代/50000円~10万円 40代/10万円
兄弟姉妹……20代/30000円~50000円 30代/30000円~50000円 40代/10万円
おじおば……20代/10000円 30代/10000円~30000円 40代/10000円~30000円
それ以外の親族……20代/3000円~10000円 30代/30000円~20000円 40代/5000円~30000円
友人や知人……20代/30000円 30代/5000円~10000円 40代/5000円~10000円
上司……20代/3000円~5000円 30代/50000円~10000円 40代/5000円~10000円
出典:価格.com「お葬式と法事で違う?香典の金額相場を知ろう」
なお、「配偶者の親族」に関しては、「自分の親族」が亡くなったときと同じ金額を包み舞う。
たとえば配偶者の父母が亡くなったとき、自分が30代であったのなら、50000円~10万円を包むことになります。
また、ご親族が亡くなった場合は、「立場が同じ人(兄弟姉妹)」で金額を合わせた方が良いので、そのあたりを相談するとよいでしょう。
ちなみに「上司」「同僚」「取引先」などの場合は、個別で出すのではなく、部署ごとでまとめて出す場合もあります。そのため職場関係で訃報を受けたときには、まず周りの人がどのような対応を行うのかを確認するとよいでしょう。
ここではあくまで「基本の考え方」について解説しています。実際には地域差があったり、生前の関係の濃さによって包んだり包まなかったりします。
また、「4000円」「9000円」のように、4や9の付く金額は避けます。これは「死(4)」「苦(9)」に繋がるからです。端数を出すことも望ましくないので、この場合は5000円や10000円としましょう。
<香典(不祝儀)を渡すときのマナー>
香典(不祝儀)は、袱紗(ふくさ)に包んで持っていきます。なお現在は袱紗ではなく、ケース型になっているものを使っても良いとされています。袱紗は、弔事か慶事かで使うべき色が違っていて、弔事の場合は寒色系、慶事の場合は暖色系を用います。ただ、新しく買い求めるのであれば、紫色のものを選ぶとよいでしょう。紫色の袱紗は、弔事にも慶事にも使えるからです。
香典(不祝儀)は、基本的には受付で渡します。ただし、親族控室に入ることができるほどの関係性(自分自身も近しい親族)であるならば、親族控室でご遺族にお渡しすることも可能です。判断がつかないのであれば、受付で渡すようにします。
受付での渡し方は、以下の通りです。
1.受付にて一礼する
2.芳名帳に記帳を行う(※現在はプライバシー保護の観点から、「芳名帳」ではなく「豊明カード」に記すこともある)
3.受付の人に一声かけて、袱紗から香典(不祝儀)を出し、香典(不祝儀)を渡す。なお香典(不祝儀)を渡す際は、受付の人からみて、表書きが正しい方向にするように反転させる
受付を務める人の多くは、「ご遺族・ご親族」ではなく、ご遺族やご親族の会社の同僚やご近所さんなどです。そのため、ごく簡単なあいさつ・声掛けを行うだけにとどめます。
<宗教別、不祝儀袋の表書きの書き方と不祝儀袋の選び方>
弔事に慣れていない人をさらに混乱させるのは、「宗教によって不祝儀袋の書き方や、選ぶべき不祝儀袋が異なる」という点でしょう。
ここでは宗教別に、不祝儀袋のマナーについてお伝えします。
【仏教の場合】
仏教の場合は、「御香典(御香奠)」「御香料」「御霊前」とするのが一般的です。「御仏前(御佛前)」でも構わないとすると説もありますが、これは厳密には四十九日法要を過ぎた後に使う表現だとする説もあるため、避けた方が無難です。
ただし、「御霊前」という言葉は、浄土真宗の場合は使いません。浄土真宗の死生観として、「亡くなった人はすぐに成仏される」とする考え方があるため、「霊の前に供える」という意味を持つ「御霊前」は使わないのです。浄土真宗の場合は、「御仏前(御佛前)」とします。
「相手が仏教徒であることはわかっているが、浄土真宗かそれ以外かがわからない!」という場合は、「御香典(御香奠)」「御香料」が無難でしょう。
葬儀に使う水引は、結びきり、あるいはあわじ結び(結びきりの一種)とします。黒と白の水引、あるいは双銀。双白の水引を選びます。ちなみに一部の地域では黄色と白の水引を選びますが、これはほかの地方では「法事のときの水引」と解釈されることが多いため、確信がない限りは避けた方が無難です。
仏教の場合は、ハスの花が印刷された不祝儀袋を使うことができます。ハスの花は仏様と非常に深い関わりを持つ花であるため、仏教の葬儀においてはこのハスの花が印刷された不祝儀袋が好んで使われます。もちろん、白無地の不祝儀袋を使っても構いません。
【神式・神道の場合】
神式と仏式の葬式は似ている部分もありますが、不祝儀袋でははっきりと区別されます。
神式の場合、不祝儀袋の表書きは「御玉串料」「御榊料」「御霊前」「神饌料」などのようにすることもあります。「御榊」は、神道において神聖とされている「榊(サカキ)」を表す言葉です。なおこの榊は、葬式のときにも使われます。榊に紙垂を付けたものを「玉串」と呼び、これを裁断に捧げる行為を「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」と呼びます。この玉串奉奠は仏教の葬式における「御焼香」と同じ意味を持つもので、非常に重要視されます。
なお、「神饌」とは、「神様にお供えするお供え物」を意味する言葉です。
葬儀に使う水引は、仏教と同様、黒白あるいは双銀。双白の結びきり(あわじ結び)です。
しかし神式の場合は、ハスの花の入った不祝儀袋は使いません。ハスの花は仏教の花ですから、神式の葬儀には不適当なのです。神式の場合は、不祝儀袋は白一色の無地のものを選ぶことになります。
【キリスト教の場合】
キリスト教は、プロテスタントかカトリックかで表書きが異なります。
カトリックの場合は葬式の場でもミサを行うため、「御ミサ料」という表書きを選ぶことができます。
対してプロテスタントではこの表記が使えず、「献花料」「忌慰料」などの表記を使うことになります。
「カトリックかプロテスタントかわからない」という場合は、「御花料」「御霊前」などの表書きを選ぶとよいでしょう。
キリスト教の場合、水引は用いなくても構いません。ただ現在は、「水引のついていない不祝儀袋」を探すのはなかなか大変です。キリスト教では「水引を用いなくてもよい」としてはいますが、「水引を用いてはならない」としているわけではないので、黒白・双銀・双白の結びきり(あわじ結び)の水引のついた不祝儀袋を使っても構いません。
キリスト教の場合、十字架やユリの花が印刷された封筒を使うことができます。しかしハスの花のついたものは使えません。
【相手の宗教・宗派に確信が持てない場合】
「相手の宗教・宗派が何かわからない」「確信が持てない」「覚えられる自信がない」という場合は、
- ・黒白の水引で(黒白の場合、水引は結びきりになります)
- ・白い無地の封筒に
- ・「御霊前」と表書きをした不祝儀袋を用意する
「御霊前」は仏教でも神式でもキリスト教でも使えるものです。厳密にいえば「仏教のなかでも、浄土真宗の場合はNG」とされますが、一般参列者の立場でそれが咎められることはありません。
また、白い無地の不祝儀袋と黒白の水引ならば宗教を選ばずに使えます。
<香典(不祝儀)にまつわるQ&A>
ここからは、香典(不祝儀)にまつわるよくある質問に、簡単に答えていきましょう。
Q.通夜と葬儀・告別式の両日に参加する。この場合、香典(不祝儀)はいつ持っていけばいい? 記帳はどうすればいいの?
A.基本的には通夜のときのみ持参すればよい。ただし記帳は両日行う。
Q.「香典(不祝儀)辞退」と書かれていた。この場合はどうするべき?
A。ご遺族のご意向に従い、香典(不祝儀)は渡さないようにするのが正解。これは「香典(不祝儀)を頂くのは申し訳ない」という気持ちからでもあるが、「香典(不祝儀)を頂いた場合は、香典(不祝儀)をしなければならない」という手間を避けたいからという理由からでもある。不安な場合は持参してもよいが、断られたら押し付けずに戻すようにする。
Q.通夜と葬儀・告別式のときは入院中で、どうしても伺うことができなかった。後日にお渡しするときのマナーを教えてほしい
ご家族に確認をして了承がとれたのならば、後日弔問に伺うようにするのがもっとも正式なやり方である。そのときは、四十九日法要が過ぎていれば「御仏前(御佛前)」とする。ただし、可能ならば四十九日法要の前に伺いたい。
なお。現在は郵送で香典(不祝儀)を送ることも問題ないとされている。その際は、お悔やみの言葉を記した手紙を添えるようにすると丁寧である。日本の法律で現金を浮遊郵便で送ることは禁じられているため、現金書留を利用する必要がある。
また、「自分自身は行けないが、ほかの人にお願いすることはできる」という場合は、その人に託しても構わない。
香典(不祝儀)は、相互扶助精神に基づいてやりとりするものです。弔意を示す意味でも、ご家族への思いを伝える意味でも、マナーをしっかり守ってお渡ししたいものですね。
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