お葬式の相場
お葬式の相場~費用のからくりと、金銭的余裕がないときの解決策もお教えします
「人は、生まれてから死ぬまでお金がかかる」ともいわれます。その「死ぬとき」に行われることが多いお葬式でも、お金は出ていくことになります。
多くの人にとって、お葬式は非日常的なものです。そのため、「いったい相場はどれくらいなのか」「どのようなことにお金が使われているのか」「金銭的に余裕がないときにはどのような方法で乗り切ればよいのか」を解説していきます。
<お葬式の費用の平均は200万円程度、その内訳は?>
まず押さえておきたいのが、「お葬式の費用はいくらくらいなのか」という点です。
これの答えを端的に言うと、「200万円程度」となります。
この「200万円程度」のなかには、
- ・お葬式を行うときにかかる人件費や祭壇の準備費用、ご遺体の搬送に関わるもの
- ・宗教者(※以下では、特段の事情がない限りは仏教での葬儀を想定します)に支払うお金
- ・通夜振る舞いや精進落としでの飲食費用
この「200万円」という数字については懐疑的な見方をする専門家も多く、「現実のお葬式との間に乖離(かいり)があるのではないか」とする意見も出ています。
しかし実際に行われた、「故人の配偶者はまだ現役世代で、故人の子ども2人は働いていて、故人自身は専業主婦である。祭壇は花祭壇とし、通夜と葬儀・告別式を行い、通夜振る舞いや精進落としの席も設けた」というお葬式の場合にかかった費用が「200万円を少し出るくらい」だったこともあり、「200万円という数字は、極めて常識外れの数字である」とまでは言えないかと思われます。
もちろん、「配偶者はすでに現役を退いている世代である」というケースの場合は、多くの場合お葬式の規模も小さくなるため、費用は安くなるでしょう。しかし社葬などが統計結果に入った場合、金額は跳ね上がります。これらを加味しても、やはり「200万円」という数字は、やや正確性に欠ける部分はあるもののおおむね納得のいく数字だと考えられるでしょう。ここでもこの「200万円」を基準として解説していきます。
※上記の数字は、2019年からみられた新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は考慮に入れていません。新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延によって、お葬式がきわめて縮小化しているため、2019年~2021年のお葬式の平均額を算出した場合は、おそらく200万円には達しない可能性が高いと思われます。
出典:葬儀支援ネット「葬儀の平均額」
https://www.sougisupport.net/hiyo_average.html
<お葬式の値段を構成する要素~「〇万円から」の「〇万円」で行えないのはなぜ?>
「200万円のなかには、
- ・お葬式を行うときにかかる人件費や祭壇の準備費用、ご遺体の搬送に関わるもの
- ・宗教者(※以下では、特段の事情がない限りは仏教での葬儀を想定します)に支払うお金
- ・通夜振る舞いや精進落としでの飲食費用
ご僧侶や飲食費用を除く「お葬式費用」は、「祭壇費用」などとも呼ばれます。ここでもこの表記を使います。
「祭壇費用」という呼び方は便宜上のもので、このなかに、「花代」「人件費」「ご遺体の搬送費用」「葬祭ホールの使用量」「遺影写真を作る費用」「返礼(香典返し)」「枕飾り」「棺と骨壺」「火葬費用」「礼状費用」などが含まれます。
お葬式に関わる大部分を占めるカテゴリーであるため、この祭壇費用はお葬式の費用のなかでも大きな割合を占めます。データや実際のお葬式によって異なりますが、お葬式費用の2分の1~3分の2程度がこの「祭壇費用」にあたります。
宗教者に支払う費用は、一般的に、「寺院費用」などと呼ばれます。お布施やお車代などがここに含まれます。なお本来は「戒名料」という言い方は避けるべきですが、戒名をつけていただく際にお渡しするお布施もここに含まれます。
これは全体の4分の1程度となることが多いといえます。ただ寺院との付き合いによって上下します。そのため、実際には4分の1以下になる可能性もあります。
「飲食費用」は、通夜振る舞いで出される桶や、精進落としの席で出される料理の費用をいいます。またその際に飲む飲み物の費用もここに含まれます。細かいことではありますが、「宿泊施設を併設する(あるいは親族控室で眠ることができるようになっている)葬儀会場で過ごしたときに食べる朝食費用」「火葬場で食べる軽食」などもここに含まれることが多いようです(※現在はコンビニエンスストアで済ませる人が多くなっていたり、火葬場に持っていく軽食は供物のなかから出したものであったりすることもあるため、これらの費用が含まれない場合もあります)。
これも全体の4分の1程度になることが多いといえます。
さて、お葬式の費用に多少なりとも興味を持っている人の場合、葬儀会社のサイトで「20万円から」「13万円から」という数字を見ることになるのではないでしょうか。ただ同時に、「実際にお葬式を行ったら、それよりずっと高くついた!」という意見も目にすることになるかもしれません。
実際にプランを利用した人からしたら、「葬儀会社は最低価格をいつわっているのだ」と感じられるのも無理からぬことではあります。
ただこれは、葬儀会社の想定する「お葬式の値段の内訳」と、実際にプランを利用する人の「お葬式の値段の内訳」が異なることによるものだといえます。
葬儀会社側は、「宗教者に渡すことになるお布施や飲食費用は、変動するものだ」という認識でいます。実際、このあたりは「残されたご家族や故人の宗教への帰属意識と、信仰している宗派の普及具合(どの宗派がメジャーかは地域によって大きく異なり、その地域ではあまりみられない宗派を信仰していた場合はお布施も高くなる傾向にあります)」「どれだけの量の飲み食いをするのか」によって大きく変わってきます。そのため、葬儀会社の方では算出しきれないのです。
個別に見積もりを出す段階までいけば、飲食費用についてはある程度常識的な数字を盛り込んでくれますし、問い合わせれば寺院費用の相場も教えてくれます。
しかし不特定多数の人が見ることになる葬儀会社のサイトにおいては、寺院費用や飲食費用を盛り込めないのです。
このような事情から、葬儀会社は「寺院費用や飲食費用を除いた金額」を提示することになります。そのため、実際にかかる金額よりもずっと安い金額が、インターネットに掲載されることになるのです。
<お葬式の費用を抑える方法その1~葬儀の規模を小さくする>
お葬式の相場とお葬式の値段のからくりを知ったところで、ここからは「ではどうしたらお葬式の費用を抑えることができるか」について考えていきましょう。
お葬式の費用を安く抑える一番簡単な方法は、「葬儀の規模を小さくすること」にあります。
これは主に3つの方法があります。
【祭壇自体を小さくして、借りるホールのスペースも小さくする】
借りるホールの大きさによって、お葬式の費用は変わってきます。そのため、単純に、小さいホールでお葬式を行えばその分費用が安くなります。また小さいホールには大きな祭壇を入れることができないため、祭壇自体も必然的に小さくなるため、祭壇を飾る花の量も少なくて済みます。
お金のことだけを考えて小さいホールにしてしまうのは考え物ではありますが、「故人も年をとっていて、喪主も引退している。そもそも人が来ない」という場合は、小さいホールでも問題ありません。むしろ大きなホールにしてしまうと、人がいなくて閑散とした状態になってしまうため、小さなホールでのお葬式が推奨される場合もあります。
ちなみに現在の葬儀会社は誠実なところが多く、故人や喪主のバックボーンをふまえたうえで適切なホールのサイズを提案してくれるところが大半です。
【お葬式の日程ややり方を考える】
お葬式の日程が多くなればなるほど、費用はかさむことになります。そのため、これを短くすることで費用負担を軽減してもよいでしょう。
日程からお葬式をみた場合、そのパターンは下記の3種類に分かれます。
- ・一般葬……通夜+葬儀・告別式のプランであり、2日間にわたって行われる。多くの場合、火葬後の法要や精進落としの席が設けられる。
- ・一日葬……通夜を行わず、葬儀・告別式のみを行うプランであり、1日で終わる。火葬後に法要や精進落としの席を設けるかは、各ご家庭で異なる
- ・直葬……火葬式とも呼ばれる。もっとも簡素なかたちの葬儀である、通夜も葬儀・告別式も行わない。ご遺体の安置箇所から火葬場に向かい、火葬をして終わる。特殊なケースを除き、法要や精進落としは行わない
一般葬がもっとも高く、直葬がもっとも安くなります。そのため、お葬式にかける費用を抑えたいのであれば、直葬を選択するとよいでしょう。
なお、似て非なるものに「家族葬」があります。家族葬は「近所の人などに告知せず、訃報を告げた人たちだけで行う葬儀」をいいます。そのため、「家族葬かつ一般葬」「家族葬かつ一日葬」などの状態になることもあります(直葬の場合、基本的には家族葬となります)。
家族葬を行うことで費用は安くなりますが、不祝儀も入ってこなくなる点には注意が必要です。
【料理のグレードなどを考える】
故人や家族を悼んできてくれる人のための御礼や区切りとして、通夜振る舞いや精進落としがあります。このため、本来の考え方から言うのであれば、料理のグレードは下げるべきではありません。
ただ現在は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が非常に大きく、「会食は避ける方がベター」という考え方が主流です。このため、あえて精進落としの席は設けず、お弁当というかたちで持ち帰ってもらうのもよいでしょう。お弁当にした場合、料理にかかるお金や飲み物にかかるお金が結果的に少なくなります。
<お葬式の費用を抑える方法その2~無宗教でのお葬式を行う>
「寺院費用は、お葬式の費用全体の4分の1を占める」ということから、無宗教のお葬式を選択する人もいます。ごく単純に計算した場合、これで50万円近くの費用削減になります。
もちろん、故人やご家族の宗教への帰属意識が高い場合、ご僧侶を呼ばないでお葬式を行うことに強い抵抗感を持つことでしょう。基本的には直葬はご僧侶を呼ばずに行われますが、「直葬だけど、どうしてもご僧侶様に読経をしていただきたい」として、ご僧侶を手配するご家庭もあります。このような場合は、故人とご家族の考えを優先するようにします。
ただ、「そもそも宗教への帰属意識が極めて低い」「とにかく『金をかけないでくれ』というのが故人の遺言」「宗教に忌避感がある」「宗教にとらわれないお葬式にしたい」と考えるのであれば、無宗教のお葬式を選択してもよいでしょう。
<お葬式の費用を抑える方法~各種補助を利用したり、葬儀会社に相談したりする>
https://www.google.com/search?client=firefox-b-d&q=%E8%91%AC%E5%84%80%E3%80%80%E7%9B%B8%E5%A0%B4「生活保護世帯であるので、葬儀を出すお金がない」などの場合は、公的な助けを受けるのもひとつの手です。
生活保護を受けている人が亡くなったり、生活保護を受けている人が喪家となったりした場合、「葬祭扶助」を受けることができる場合もあります。これは「最低限のお葬式」を行うために出されるもので、大人の葬儀には20万6000円、子どもの葬儀には16万48000円が出されます。これを利用すれば、必要最低限のお葬式を行うことができるようになるわけです。
ただし葬祭扶助を利用した場合、この金額からオーバーすることは許されません。たとえば、「20万6000円の葬祭扶助が得られるから、自腹で50000円をプラスして飲食費用にあてたい」などのようなやり方は禁じられています。
また、最初の段階で葬儀会社に「予算」を伝えるようにするのも良いでしょう。葬儀会社はその予算内で収まるようなプランを組み立ててくれるはずです。特に上記の「葬祭扶養を利用したお葬式」を考えているのであれば、必ず事前に葬儀会社に相談してください。
なお、「そこまでは困窮していないが、一括で費用を支払うのは少し苦しい」という場合は、その旨を葬儀会社に伝えてください。多くの場合、分割での支払いを提案してくれるはずです。また、場合によっては葬祭ローンも検討しましょう。
お葬式の相場を知ることで、お葬式を安くするための方法もみえてきます。
無理のないお葬式で、故人をお見送りしたいものですね。