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手元供養とは

手元供養、新しい供養のあり方とは?~愛した人とずっと一緒に過ごす方法

「ご遺骨の行く先」に、明確な正解はありません。多種多様な弔い方が選択肢として存在します。
今回はそのなかから「手元供養」を取り上げ、

  • ・手元供養とは何か
  • ・手元供養の種類~すべてのご遺骨を仏壇で弔う・分骨をする・アクセサリーにする
  • ・手元供養のメリット
  • ・手元供養のデメリット
の4つを解説していきます。

<手元供養とは何か~ずっと家でご遺骨を供養していく方法を指す>

まず、「手元供養とは何か」から解説していきます。

一般的に、火葬をした後のご遺骨は、お墓や納骨堂、樹木葬などのようなかたちでどこかに埋葬されます。
しかし手元供養の場合は「埋葬」を行わず、ずっと自分の手元で供養をしていきます。詳しくは後で解説しますが、仏壇にご遺骨を置いたり、アクセサリーにして身に着けたり……といったやり方をとります。

現在のような手元供養のやり方が広まってきたのは、2000年代に入ってからだといわれています。
「お墓は田舎にあるが自分自身は都会に出ているため、一度お墓に入れるとなかなか会いに行けなくなる」「お墓がなく新しく建てなければならないが、費用が捻出できない」「心の整理がついておらず、埋葬というかたちでお別れするのが耐えられない」などの理由で、手元供養を選択する人が出てきているのです。

「四十九日法要の後にご遺骨をお墓に入れる」「一周忌を機として、ご遺骨を埋葬する」などのやり方が比較的一般的である現在において、この「手元供養」というやり方は物珍しいもののように思えるかもしれません。
しかし実は日本には、「〇年経つまでに、必ずご遺骨を埋葬(やそれに類する方法)しなければならない」などのような法的な縛りは存在しません。そのため、残されたご家族が納得するまで手元供養を続けることができます。
なお昔は「早く納骨してあげないと、故人が浮かばれない」「いつまでも成仏できない」とする意見もありましたが、これはまったくの迷信です。ただの俗説にすぎない話ですから、気にする必要はありません。

なお、「供養」という言葉は、厳密には仏教のものです。ここでもこれにのっとり、特別な事情がない限りは、「仏教を信じていた人が亡くなった状態」を想定してお話をしていきます。ただ現在は、仏教に限らずほかの宗教でも「供養」という言い方を使うこともあります。また、この「手元供養」は、「仏教の人以外は行ってはいけないもの」ではありません。キリスト教や神道を信仰している人、それ以外の宗教を信じている人、また無宗教の人であっても、手元にご遺骨を置いて面倒を見ていくことができます。

<手元供養の種類~すべてのご遺骨を仏壇で弔う・分骨する・アクセサリーにする>

「手元供養」と一口にいっても、その種類はさまざまです。
ここでは

  • ・すべてのご遺骨を仏壇で弔う
  • ・分骨をして、一部のご遺骨のみを手元供養で弔っていく
  • ・アクセサリーにする
の3パターンを紹介します。

【すべてのご遺骨を仏壇で弔う】
火葬後に行われることになる「収骨」で、故人の骨を骨壺に入れることになります。
この骨壺を仏壇などに置いて弔っていく方法は、手元供養のなかでも比較的イメージしやすいものなのではないでしょうか。なおここでは便宜上「仏壇に置く」としていますが、「仏壇を買う経済的余裕がない」「信仰している宗教では仏壇は使わない」「そもそも仏壇などの宗教的なものは家に入れないスタンスである」という場合は、仏壇に置かずに保管することもあります。

故人のすべてのご遺骨を手元に残しておく方法であり、ほかの行動や手続きも必要としないため、非常に負担の少ない方法だといえます。

【分骨をして、一部のご遺骨のみを手元供養で弔っていく】
「分骨」とは、火葬をし終えて骨壺に入れたご遺骨の一部を、ミニ骨壺などに移すことをいいます。つまり「ご遺骨を保管するもの」が2つ出来上がるわけです。
このうちの片方(多くの場合は、多くのご遺骨が入っているメインの骨壺)を納骨堂やお墓、樹木葬や海洋葬で弔い、もう片方を手元供養として手元に残していく方法があります。それがここで触れる、「分骨をして、一部のご遺骨のみを手元供養で弔っていく方法」です。

この方法の場合、メインとなる骨壺は埋葬(やそれに類する方法)で弔うため、ご親族からの反対が起こりにくいというメリットがあります。そのメリットにプラスして、手元供養によって得られる「故人が近くで見守っていてくれる感覚」を味わうこともできます。
また、「故人が亡くなった後、婚家との関係がこじれてしまった。自分は手元供養で弔いたいが、婚家では先祖代々の墓に入れたいと言っている」などのようなケースにも対応できるというメリットもあります。

なおかつては、「分骨をしてしまうと故人もバラバラになってしまい、浮かばれない」「故人の体を分けてしまうことに等しい」と言われることがありましたが、これも「手元供養をすると故人が浮かばれない」同様、ただの迷信です。気にすることはありません。そもそも仏教の祖であるブッダ(仏様/ゴーダマ・シッダールタ)もまた、分骨されて仏舎利に収められています。キリスト教においても、聖女や聖人の骨を「聖遺物」として教会に祀る風習があります。そのため、「分骨だから故人が迷う」というのはまったくの迷信だと断言できます。

【アクセサリーにする】
近年注目を集めている弔い方法として、「故人のご遺骨や遺灰を利用したアクセサリーを作る方法」があります。
これは、分骨した故人のご遺骨などをペンダントの中に封じ込めたり、ダイヤモンドに加工したりして身に着けられるようにしたものです。
上記で紹介した手元供養の場合は、「故人の見ている風景」は基本的には変わりません。しかしアクセサリーに加工すると、「自分が足を運んだところの景色を見せてあげられる」というメリットがあります。また、普段から身に着けていることで、「いつも一緒」の感覚を抱きやすいことでしょう。

なお現在のご遺骨アクセサリーは非常に美しくできていて、言われたとしてもそれがご遺骨を利用して作られたアクセサリーとはわからないほど自然な出来です。

ただご遺骨アクセサリーにすることができるご遺骨の量はかなり少ないので、「ほかのご遺骨はどうするか」という課題は残り続けます。

<手元供養のメリット>

ここからは、手元供養のメリットについてみていきましょう。

1.故人のことを身近に感じ続けることができる
お墓や樹木葬、海洋葬などの選択肢は、決して悪いものではありません。しかしこのように「自宅以外のところ」で埋葬をしてしまうと、会いに行くのがかなり大変になります。特に海洋葬の場合はその傾向が顕著です。

しかし手元供養を選べば、どこかに足を運ぶことなく、常に故人が側にいてくれます。特にご遺骨アクセサリーにする場合は、「一緒にいろいろなところに足を運べる」というメリットがあります。

「いつまでも故人のことを身近に感じていたい」「生きていたころと同じように、朝晩あいさつをしたい」と考える人にとっては、手元供養は非常に良い選択肢となりえるでしょう。
このような心理的な充足感から、手元供養を積極的に選ぶ人もいます。

2.費用が掛からない
手元供養は、もっともお金がかからない弔いの方法です。
「樹木葬はお墓を建てるのに比べると安い」などといわれていますが、それでも50万円程度の出費は覚悟しなければなりません。海洋葬も最低でも10万円程度の出費は見込んでおくべきでしょう。お墓を建てる選択肢にいたっては、150万円を超えることも珍しくありません。「埋葬をするという選択肢のなかでは、もっとも費用を抑えられる」とされている合葬であってすら、50000円程度はかかります。

しかし手元供養は、0円で行うことができます。
新たに仏壇を買う場合は仏壇の費用がかかりますが、仏壇は「必ず買わなければならないもの」ではないため、これも省くことができます。
経済的な負担に苦しむ人にとっては、この供養方法は非常にありがたいものに思えることでしょう。

3.高齢者施設などで生活する場合でも、一緒に連れていくことができる
少子高齢化社会になった現在、終の住処として高齢者施設を選ぶ人も増えています。
外出時間に縛りがある施設に入ったり、足腰が弱くなったり、認知症を患ったりした場合、お墓にお参りすることも難しくなるでしょう。その結果、「故人とゆっくり話しあいたいのに、それがかなわない」という状況に陥ることも珍しくありません。

しかし手元供養の場合は、骨壺ごと高齢者施設に移ることができます。そのため、入所後も故人とずっと語り合うことができます。このようなメリットから、手元供養を選ぶ人もいます。

<手元供養のデメリット>

「心理的な充足感を得られる」「費用の負担を0にすることもできる」「高齢者施設にも連れていける」というメリットを持つ手元供養ですが、これにはデメリットもあります。
それについてみていきましょう。

1.ご親族からの理解が得られにくい
手元供養は、ご親族からの理解が得られにくい弔いの方法だといえます。
一般的なお墓や樹木葬を選んだ場合、ご親族にも「手を合わせる場所」を共有することができます。海洋葬には「手を合わせるシンボル」はなく、また現地にまで赴くのはなかなか骨が折れることではありますが、それでもその気になれば、お参りに行くことはできます。

しかし手元供養の場合、「ご家族が家で供養をしていくスタイル」であるため、ご親族はそう簡単に手を合わせに行くことはできなくなります。「分骨をして、その一部を納骨堂やお墓に入れる」というやり方をとる場合はその納骨堂やお墓に足を運ぶこともできますが、「すべてのご遺骨を、1家族だけが手元で供養していく」というスタイルをとる場合はこれもかないません。

このような状況から、手元供養に反対するご親族もいるでしょう。

2.災害による危険も否定できない
日本は非常に災害が多い国です。特に地震がよく置きます。このような災害にあった場合、ご遺骨が紛失してしまったり、骨壺ごとご遺骨がダメージを負ったりする可能性も否定できません。

3.費用面の問題から手元供養を選んだ場合、結局課題は残り続ける
手元供養のもっとも大きなデメリットは、「費用面の問題から手元供養を選んだ場合、結局課題は残り続けること」かもしれません。

手元供養を選択した場合、そのときに支払う費用を0円に抑えることができます。しかしその後、何年も何十年も手元供養を続けていった場合、「手元供養をしていた人自身が亡くなる」という可能性も十分に考えられます。亡くなるところまでいかなかったとしても、重い病気をしたり認知症を患ったりすることも十分に考えられます。
特に、「親は1人しかおらず、子どもも1人で、その子どもは配偶者も子どもも持たなかった」などのような場合は、このような心配事が現実味を帯びることになります。

このような状況になったとき、「行先の確保できないご遺骨」が手元に残ることになります。ご遺骨を手元供養していた人も亡くなったのであれば、行先の確保できないご遺骨の数は2霊になるでしょう。

これを避けるためにはご遺骨を受け継いだ人が、ご自身が元気なうちに「手元供養を終えた後のご遺骨の行く先」と「自分が死んだ場合の遺骨の行先」を決めなければならなくなります。そのためにはある程度の予算を確保する必要も当然出てきます。
費用の問題だけを理由として手元供養を選んだ場合は、いつかは「お金をかけた埋葬」に向き合わなければならないという現実を見据え、資金繰りを考えなければなりません。そうしなければ、ただ問題を先送りしているだけにすぎないからです。

さまざまな弔いのかたちが提案されるようになった現在、「手元供養」という選択肢もそう珍しいものではなくなりつつあります。特に「生前同様、故人を身近に感じていたい」「いつもそばにいてほしい」といった気持ちを抱く人にとっては、手元供養は第一の選択肢となりうるでしょう。
しかし手元供養にはデメリットもあります。このようなデメリットをふまえたうえで、手元供養を選ぶか、それともほかの別の方法を選ぶかをよく考えて結論を出していかなければなりません。

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